トランス脂肪酸をご存知でしょうか?
「狂った油」とも呼ばれる非常に危険な脂肪です。
WHOではその危険性が声高に叫ばれ、つい最近アメリカ政府(正確には政府機関のFDA)が2018年6月から全面的に使用・販売禁止を決定したほどの恐ろしい物質です。
そんな恐ろしい物質を、まったく取り締まらずに野放しにしている国があります。
そう。日本です。
日本で買える食品にはトランス脂肪酸が含まれるものが非常に多く、知らず知らずのうちにあなたやあなたの大切な人の体を蝕んでいきます。
これから紹介する症状がもしあなたや、あなたの周りの人に起きていたとしたら、それはトランス脂肪酸の影響かも知れません。
大人の無知は罪です。もし、トランス脂肪酸がどんなものか、どんな症状が起こりうるのか知らなかったとしたら、必ず読んでいただきたい内容です。
死を招く危険な油『トランス脂肪酸』が引き起こす病気・害、多く含む食品の例など、トランス脂肪酸に関する知識を分かりやすくまとめました。
30秒でわかる記事の概要
トランス脂肪酸とは?
はじめに、トランス脂肪酸とはどのような油のことを指すのか、基礎的な知識をご説明します。
トランス脂肪酸は大きく分けて2種類の油が存在し、天然のトランス脂肪酸(シス型トランス脂肪酸)と人工トランス脂肪酸(トランス型トランス脂肪酸)がそれに当たります。
天然のトランス脂肪酸(シス型トランス脂肪酸)
天然のトランス脂肪酸は、牛や羊などの反芻動物の腸内で産生されるものです。
牛や羊の胃内にいる微生物のはたらきによって生まれ、そのため、これらの動物の乳(牛乳など)やそれを原料とした乳製品や肉に少量含まれています。
主に天然のトランス脂肪酸は『シス(cis)型』といい、水素が炭素の二重結合を挟んで同じ側につく原子構造を持っています。
人工トランス脂肪酸(トランス型トランス脂肪酸)
一方、人工的に作られたトランス脂肪酸は植物油などに水素原子を人工的に付加して加工・生成されたもの。
マーガリンやショートニング等の、いわゆる一般的なトランス脂肪酸はこの人工トランス脂肪酸のことを指します。
加工食品の成分表示に『植物油脂』と表示されているものは、ほぼこの人工トランス脂肪酸であることが多く、マーガリンやパン、お菓子、揚げ物など、スーパーやコンビニに出回るあらゆる食品に含まれています。
他にも、サラダ油やキャノーラ油などの植物油にも含まれ、これは原料となる植物から油を搾り出す際に加熱することでトランス脂肪酸が発生するためと言われます。
なお、天然のトランス脂肪酸は『シス(cis)型』に対し、こちらは水素原子が炭素の二重結合を挟んで反対側についています。
それゆえ「横切る」という意味のある『トランス(trans)型』と呼ばれます。
※この記事で解説するトランス脂肪酸は、この人工トランス脂肪酸のことを指し、後述する食品・病気・害などは、主に人工トランス脂肪酸に関するものです。
世界では「禁止」されている危険な油
前述のように、日本では様々な食品にトランス脂肪酸が含まれていますが、世界的に見ればトランス脂肪酸は使用を禁止もしくは規制された危険な油です。
使用の禁止・規制の発端となったのはWHO(世界保健機関)が2003年に出した勧告。
後述する様々な病気・弊害をもたらすことから「トランス脂肪酸の摂取量は総エネルギー(kcal)の1%未満に留めるべきだ」という指針を示しています。
これをきっかけに世界各国では禁止・規制の流れが起こり、それぞれ以下のような対応がとられています。
デンマーク
最も早く対応をとった国がデンマークで、なんと2003年3月にトランス脂肪酸とそれを含む食品の法規制を行いました。
ちなみにトランス脂肪酸の上限は2%ですが、これは食品全体の値ではなく、食品中に使用された油脂に含まれる量。
デンマーク政府はトランス脂肪酸の摂取量を1日20gから6gへ減らすことを目標に、こうした厳しい法規制を敷きました。
この法規制後、デンマークにおける虚血性心疾患による死亡率を半分に減少。トランス脂肪酸の規制と関係しているのではないかという仮説も立てられています。
アメリカ
デンマークに次いで有名なのがアメリカです。
WHOの勧告から3年後の2006年には、ニューヨーク市内のレストランでトランス脂肪酸が使用禁止にされました。
さらに最近では、食品医薬品局(FDA)によって、2018年6月から全米においてトランス脂肪酸を食品に使用・添加禁止が決定されています。
カナダ
アメリカの隣の国であるカナダでも、段階的にトランス脂肪酸の禁止が進められてきました。
2005年12月には、 カナダ保健省によりほぼ全ての食品のラベルにトランス脂肪の使用量を記載することを義務付けられました。
その後、カルガリー等の都市が自主的にレストランやファストフードチェーンからトランス脂肪酸を減らすための独自の規制を敷いたり等、地方自治体による積極的な規制が進みました。
そして最近では、2017年9月15日にカナダ保健省がトランス脂肪酸の全面禁止を発表しています。(2018年9月15日に完全禁止)
アルゼンチン
アルゼンチンでも2006年8月以降に、食品にトランス脂肪酸の使用量の表示を義務付けています。
さらに2010年以降は、植物性油脂に含まれるトランス脂肪酸の量を全脂肪量の2%未満、その他の食品は5%未満と規制を強めました。
そして2014年12月10日以降は、トランス脂肪酸が全面禁止されています。
※これによって、医療費の年間1億ドル以上の削減が可能であるとの見通しをアルゼンチン政府は立てています。
その他EU諸国
デンマーク以外のEU諸国でもトランス脂肪酸への規制が敷かれています。
たとえばオーストリアは、食品中の総脂肪量の4%未満を基本とし、食品全体の脂肪が20%を超える食品は2%未満に規制しています。
他に、アイスランド、ハンガリー、ラトビアでも食品の総脂肪量の2%未満という制限を設けています。
トランス脂肪酸を含有する食品とは?
続いては、トランス脂肪酸が多く含まれる食品の例をご紹介します。
内閣府食品安全委員会が2007年に発表した『食品に含まれるトランス脂肪酸の評価基礎資料調査報告書』に記載のある食品一覧を、トランス脂肪酸が多く含まれる順にまとめたものが下記の表です。
食品名 | 試料数 | トランス脂肪酸の含有量 | ||
---|---|---|---|---|
平均 | 最大 | 最小 | ||
ショートニング | 10 | 13.6 | 31.2 | 1.15 |
マーガリン、ファットスプレッド | 34 | 7.00 | 13.50 | 0.36 |
クリーム類 ※1 | 10 | 3.02 | 12.50 | 0.01 |
バター | 13 | 1.95 | 2.21 | 1.71 |
ビスケット類 ※2 | 29 | 1.80 | 7.28 | 0.04 |
食用調合油等 | 22 | 1.40 | 2.78 | – ※7 |
ラード、牛脂 | 4 | 1.37 | 2.70 | 0.64 |
マヨネーズ ※3 | 9 | 1.24 | 1.65 | 0.49 |
チーズ | 27 | 0.83 | 1.46 | 0.48 |
ケーキ・ペストリー類 ※4 | 12 | 0.71 | 2.17 | 0.26 |
スナック菓子、米菓子 | 41 | 0.62 | 12.70 | – ※7 |
牛肉 | 70 | 0.52 | 1.45 | 0.01 |
牛肉(内臓) ※5 | 10 | 0.44 | 1.45 | 0.01 |
アイスクリーム類 | 14 | 0.24 | 0.60 | 0.01 |
菓子パン | 4 | 0.20 | 0.34 | 0.15 |
食パン | 5 | 0.16 | 0.27 | 0.05 |
チョコレート | 15 | 0.15 | 0.71 | – ※7 |
練乳 | 4 | 0.15 | 0.23 | – ※7 |
即席中華めん | 10 | 0.13 | 0.38 | 0.02 |
油揚げ、がんもどき | 7 | 0.13 | 0.22 | 0.07 |
牛乳等 ※6 | 26 | 0.09 | 0.19 | 0.02 |
プレーンヨーグルト、乳酸菌飲料 | 8 | 0.04 | 0.11 | – ※7 |
脱脂粉乳 | 2 | 0.02 | 0.03 | 0.02 |
- ※1 クリーム、乳等を主原料とする食品、コーヒー用液状クリーミング、クリーミングパウダー、植物油脂クリーミング食品が含まれる。
- ※2 ビスケット、クッキー、クラッカー、パイ、半生ケーキが含まれる。
- ※3 サラダクリーミードレッシング及びマヨネーズタイプが含まれる。
- ※4 シュークリーム、スポンジケーキ、ドーナツが含まれる。
- ※5 心臓、肝臓、はらみ(横隔膜)、ミノ(第一胃)が含まれる。
- ※6 普通牛乳、濃厚牛乳、低脂肪牛乳が含まれる。
- ※7 抽出油中 0.05g/100g(定量下限)未満のもの。
ショートニングが最も高い
トランス脂肪酸が最も多く含まれるとされるのが、ショートニングです。
ショートニングは、サクサクとした食感を出すために広く使用されている代表的な固形脂肪のひとつです。
原料は主に大豆などから作った植物油脂で、これを固形化するために水素が人工的に添加されるため、この際に多量のトランス脂肪酸を含むとされます。
保存性が高く冷凍を必要とせず、かつ、同様の用途でも散られるバターやラード等よりも安価で風味もほとんどないことから、1900年台初頭に発明されて以来、様々な食品に使われてきました。
パンや菓子類等に幅広く使用されており、それゆえコンビニやスーパー等で見かけるほとんどのパンや菓子類に含まれています。
私たち日本人にとって最も避けるのが難しいトランス脂肪酸の一つです。
トランス脂肪酸が持つ、恐ろしい2つの性質
「じゃあ、含有量の少ないケーキやスナック菓子なら大丈夫なのでは?」
…という意見もあるでしょう。
ですが、それは違います。
普段よく食べている食品が2つ以上この表にあった場合、あなたは大変危険な状態にあるかもしれません。
なぜなら、トランス脂肪酸をはじめとする、いわゆる食品添加物には2つの恐ろしい性質があるからです。
トランス脂肪酸の性質1:変異性
ひとつ目は、変異性です。
食品添加物(化学物質)はそれ単体では試験を行い許容量を定めていますが、複数を組み合わせた試験は一切行っていないのです。
これらの食品にはトランス脂肪酸以外の化学物質も多く含まれ、組み合わさって「化学反応」を起こします。
その時どんな弊害が生じるかは予想がつかず、全く不明なのです。
トランス脂肪酸の性質2:蓄積性
ふたつ目は、蓄積性です。
食べてすぐに被害が出ることはないようですが、化学物質は脂溶性のため体内の脂肪にどんどん蓄積され体の中に溜まっていきます。
これはつまり、体外に排出されづらい性質を持っていることも意味します。
最初のうちはわかりませんが、ある一定の量に達したときに一気に症状が出る傾向にあるようです。
まとめ
不潔な場所にいるイメージのゴキブリさえも寄り付かないトランス脂肪酸。実はこんなに多くの食品に含まれているのです。
✔ おすすめ
トランス脂肪酸を含まない調理油としては『オリーブオイル』もおすすめです。
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トランス脂肪酸が招く害まとめ
それでは、実際にどんな症状が引き起こされるのか順に7つ見ていきましょう。
トランス脂肪酸が招く害1:肌のかゆみ(アトピー、あせも等)
肝臓に脂肪がつく『脂肪肝』を誘発するため、肝臓本来の解毒機能も衰え、代謝を妨げます。
アトピーの脱ステロイド治療の第1人者でもある木俣肇氏による調査でも、アトピー患者の30%以上が脂肪肝であることがわかっています。(※関連記事①を参照)
また、汗そのものに有害な物質が含まれるようになるため、余計にしっしんやあせもが悪化してしまうことも。
実際に、トランス脂肪酸が含まれるものを止めてから、目に見えてアトピーが改善した例もあり、肌への影響の大きさがわかります。
合わせて読みたい:『アトピー』に関する記事
アトピーの原因や改善法など、アトピーに関する記事をご用意しています。こちらも合わせてお読みください。
トランス脂肪酸が招く害2:アレルギー
免疫機能を狂わせるため、アレルギー物質に対してより過敏に反応しやすい体質になってしまうことも指摘されています。
前述したアレルギー性のしっしんや、アレルギー性鼻炎、喘息など様々な病気を発症させます。
ある調査によれば、小児アレルギーは今や60%以上の子どもがかかっているのだとか。
あなたのお子さんはどうでしょうか?
合わせて読みたい:『アレルギー』に関する記事
アレルギー反応を起こしやすい食品は本当に身近なところに多いもの。
以下の記事にある食品・飲料・食品添加物にも十分注意しましょう。
トランス脂肪酸が招く害3:心臓病、脳梗塞などの血管系の病気
血管に脂肪が詰まりやすくなるため、これを原因とした様々な病気を引き起こします。
心臓病、動脈硬化、脳梗塞などが代表例です。
冒頭にもアメリカのFDA(アメリカ食品医薬品局)が全面禁止にしたと書きましたが、同局は、「禁止することで、年間数千件の心臓病を防ぐことができるだろう」とまで予測しています。
合わせて読みたい:『心臓病』に関する記事
心臓病になりやすい食生活はすでに判明していることをご存知ですか?
具体的な内容を以下の記事でご紹介しています。合わせてお読みください。
トランス脂肪酸が招く害3:肥満
肥満の大きな原因です。
血液に悪玉コレステロールが溜まりやすくなり、脂肪を分解・消化する機能も衰えてしまいます。結果、脂肪が溜まりやすく肥満の原因となってしまうのです。
ジャンクフード好きに肥満が多いのはこれが理由です。
合わせて読みたい:『肥満』に関する記事
肥満が招く病気やリスク、食べ物以外の肥満になりやすい要素など、『肥満』に関する知識を以下の記事でご紹介しています。
肥満・肥満気味・体脂肪の気になる方はぜひお読みください。
トランス脂肪酸が招く害4:記憶障害
記憶機能に大きな影響を与え、認知症やアルツハイマーを引き起こします。
アメリカ・カリフォルニア大学の調査によると、トランス脂肪酸を多く摂っている人ほど記憶力の低下が見られ、最も多く摂る人と最も少ない人との記憶力テストの差は10%以上にも及んだとか。
合わせて読みたい:『脳』や『記憶障害』に関する記事
アルツハイマーの原因や、予防策・脳機能を高める方法は以下の記事で解説しています。
合わせてお読みください。
トランス脂肪酸が招く害5:不妊症
男女ともに、不妊に深刻な影響があります。
女性の場合は排卵機能に多大な影響を与え、アメリカのハーバード大学の調査では、トランス脂肪酸の摂取量が多い女性ほど不妊症に陥りやすいという結果が出ています。
男性の場合は精子の量を極端に減少させます。
アメリカ・スペインの共同調査によれば、トランス脂肪酸を摂る量が多い人は、摂らない人の60%程度の量しかないことがわかっています。
合わせて読みたい:『不妊』に関する記事
不妊・流産などの原因は様々。その中でも特に気をつけたい点・対策法を以下の記事にまとめています。
女性だけでなく、ぜひ男性の方にもお読みいただきたい内容です。
トランス脂肪酸が招く害6:糖尿病
糖質の摂りすぎだけが糖尿病の原因ではありません。
インスリンのはたらきを阻害し、糖質を正しく吸収できなくさせ、より糖尿病のリスクを高めてしまいます。
アメリカ・ハーバード大学の調査では、トランス脂肪酸を多く摂る人は糖尿病の発症リスクが高まると判明しており、摂っていない人に比べ39%も発症しやすいのだそうです。
糖尿病を治すにも生活習慣の改善は必須。食事は特に大事です。こちらで紹介している食生活がとても参考になります。
糖尿病に限らず、すべての病気は食生活の改善が最良の治療です。医者の薬は本当は必要ないのかもしれませんね。
合わせて読みたい:『糖尿病』に関する記事
糖尿病の予防法・治療は『食生活』に関わる要素が大きいもの。
血糖値を下げる等、『糖尿病に効果がある』と証明された食べ物は以下の記事をどうぞ。
まとめ:トランス脂肪酸を摂らないようにするには
いかがでしたか?
とても身近な食品が、確実にあなたやあなたの大切な人の体を蝕んでいます。
政府が全く取り締まらず、これだけ多くの食品に含まれている以上、日本で全てのトランス脂肪酸を避けるのは不可能に近いのが事実。
しかし、なるべく摂らないように避けることは可能です。
なるべく市販のお菓子やパンなどは買わないようにすることはもちろんですが、普段の食事で食べるものを変えることでも対策は可能です。たとえば、
- 肉→魚に変える
- サラダ油をより良い油に変える
- お菓子は手作りする。
- 牛乳は豆乳に変える
正直、これだけでもだいぶ変わるはずです。
自分の身を守るのは自分自身。子どもの身を守るのは親の務め。
一生に関わることです。取り返しのつかないことになりかねません。
自分の周りにはトランス脂肪酸があるか、きちんと見つめ直しましょう。
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