『税の作文』をご存知ですか?
国税庁と全国納税貯蓄組合連合会が共同で主催する税金をテーマにした作文コンクールで、中学生の部・高校生の部の2つがあります。
- 増えるばかりで生活を苦しめる
- 使われ方が不透明で不適切
大人になり税金を実際に支払う側に立つと、そんな悪いイメージが先行してしまいがち。
では、税金に対しての先入観がない中学生や高校生はどんなイメージを持っているのでしょうか?
この記事では、税の作文・中学生の部において、内閣総理大臣賞(最優秀賞)を受賞した歴代作品をご紹介します。
※出典:国税庁ホームページ(http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/gakushu/sakubun/)
30秒でわかる記事の概要
はじめに:『税の作文』の概要
まずは、税の作文についての概要を簡単にご紹介します。
- 主催:国税庁、全国納税貯蓄組合連合会の共催
- 応募資格:全国の中学生
- テーマ:内容が税に関するものであれば何でもOK
※本人が創作し、未発表のものに限る - 応募点数:1人1作品まで
- 文字数:400字詰め原稿用紙×3枚(1200文字)以内、PC等で作成・印刷したものでも可
- 応募時期:6月上旬~9月上旬
- 提出先:所属先の学校を通じ、その地区の納税貯蓄組合連合会へ提出
上記内容で開催されています。
優秀な作品には、内閣総理大臣賞や総務大臣賞、財務大臣賞、文部科学大臣賞などを授与し、賞状と記念品が贈呈されます。
税の作文(中学生の部):歴代内閣総理大臣賞(最優秀賞)受賞の作品
では、ここからは平成21年度以降の歴代の内閣総理大臣賞(最優秀賞)受賞作品をご紹介します。
その年度の応募点数も合わせて記載します。
平成21年度・内閣総理大臣賞 ”税金について考えたこと”
- 応募点数:全国7213校・542889編
- 都道府県:埼玉県
- 学校:春日部市立武里中学校 2年
- 氏名:金子康夏さん
図書館の本は食べながら読むべからず。公共のものは、自分のもの以上大切にすべし。我が家の不文律だ。
しかし私には「公共のもの」の意味がわかっていなかった。「みんなの」が「税金で買われた」を意味すると分かったのは最近だ。それまでは「みんなの」なら「自分のものみたいにしていい」のかと思っていた。それがとんでもない間違いだと分かってから、私の税金に対する考えは変わっていった。
例えば、図書館の本も税金で買っていただいたものだが、本一冊の単価は自分で出せない金額ではない。しかし、私が利用させてもらっている道路も橋も、ごみ処理施設も、学校も、信号も、とても個人のお金でつくることなどかなわない。「ウチの支払っている税金では、信号機の電球一個も買えない」と聞いて、信号機などもとても高価だということがわかった。また、税金という形で、皆が少しずつお金を出し合うから、誰もが橋や道路や図書館の恩恵に浴することが出来ていることもわかった。なるほど、税金とは、すぐれたシステムだったのだとわかった。
しかし、それなのに大人が「税金をとられる」といういい方をするのはなぜだろう。まるで税金を払うのが損とでもいわんばかりなのはどうしてなのだろう。
そんな時、ある投書を目にした。その方(お年寄り)は、「年をとって、税を払えることを有り難いと感じるようになった」と書いていた。「自分はまだ人様のお役に立てている」と、喜びを感じるというのだ。若いころは税金は「とられる」と感じていたが、年を経て考えが変わってきたのだという。
私はこれを読んで、何かヒントをもらったような気がした。税金を払うことはすなわち、誰かのために役に立てた証でもあるのだ。それは巡り巡って自分にも返ってくるのだ。目先の損得を越え、助け合いながら成り立つ社会、それを支えているのが税金だったのだ。
税金を払えることに自然と感謝が湧く。これが本来のあり方なのではないだろうか。もしそれが当たり前の姿になったら、どんなに住みよい社会になるだろう。きっと世界中がまねをしたがるだろう。
これからの日本は、国民が嬉々として税金を払う、お互いへの尊敬と感謝にあふれた社会になってほしい。
そのためにはまず国民一人一人が、税金が「皆に恩恵を与えるものである」ことをぼんやりとではなくはっきりと、理解することが大事ではないだろうか。私のように中学校になるまで知らないというのではなく、小さいうちから教えていく必要があると思う。そして自分が「助け合って生きる社会」の一員であることを理解した子供は、きっと公共のものを大切にする大人に育つだろう。とりあえず私は小一の妹に私が理解したことを教えていこうと思う。
※出典:国税庁ホームページ(http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/gakushu/sakubun/chugaku/h21/sakubun.htm#a01)
平成22年度・内閣総理大臣賞 ”税と「つくる」”
- 応募点数:7345校・543736編
- 都道府県:長崎県
- 学校:諫早市立諫早中学校 2年
- 氏名:宮崎楓さん
お盆におとずれた宮ざき家のお墓は山の中腹にあり、お参りを済ませ振り返ってみると、とても青い空の下に美しい街並が広がっていて、私はしばらくその景色を眺め続けていました。そこから望める道路や海、川、森に山などといったもの全てが私達の生活にとって快適であるよう整えられているのがわかります。耳をすますと、遠くから救急車のサイレンに混じって正午を告げるチャイムが聞こえてきました。普段あまり意識したことはありませんでしたが、意外な程数多くの公共物に囲まれて日常を暮らしていることに気がつきました。そして、それらは全て税金によってつくられているのだと思いあたりました。
税金には、いろんな使い道がありますが、結局その目的は「つくる」という一言に帰結できる気がします。
道路を通して橋を架け、災害に備えて川幅を広げ山の斜面を整備したりすることなどは「造る」で、私達の生活を便利なものにしてくれます。
警察や消防で治安を維持し、自衛隊によって国を守ることなどは私達の安全にとって不可欠な社会制度で、これらは法律を「作る」ことにより実現され、執行に必要な財源は税金によってまかなわれています。制度や法律は目に見えるものではありませんが、私達が安心して暮らしていけるのも法律によって社会が安定した状態に保たれているからです。
そして、もう一つの「つくる」が「創る」です。この「創る」には、今まで無かったものを生み出すという意味があります。現代世界は、中学生の私の耳にも届いてくる程、目まぐるしく変わって行っています。その中には決して歓迎すべきではない事柄も含まれているようです。十年前と今とでは、世界の様子も大分様がわりしたと聞いていますが、私が大人になる十年後は更に変わっているでしょう。たとえどんな未来が訪れても私達が今のように安全な社会で安心して暮らして行ける制度や仕組みを「創る」ことは、何にも勝る税金の使い道だと思います。
「造る」「作る」、そして「創る」これら三つの「つくる」はどれも大切で、税金なしには実現できないことです。私達の社会は、「つくる」によって支えられているとも言えます。お墓から眺めた街の風景は、私にそんなことを教えてくれたような気がしました。
一緒に墓参に来ていた叔父夫婦が、そろそろ帰ろうかと声をかけてきました。叔母のお腹には、二人目の子供で私にとって八人目のいとこがいます。私にとっても、そしてもうすぐ生まれてくるいとこにとっても、より良い世の中であり続けること。その実現と継続のための税金であってほしいと思います。
※出典:国税庁ホームページ(http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/gakushu/sakubun/chugaku/h22/sakubun.htm#a01)
平成23年度・内閣総理大臣賞 ”税負担の公平・公正”
- 応募点数:7105校・561537編
- 都道府県:高知県
- 学校:土佐清水市立清水中学校 3年
- 氏名:池佐也加さん
私はこれまで、税のことについて自分で考えたこともないし、学校でも詳しく教わったこともありません。しかし、父が以前、市役所の税務課で仕事をしていたので教えてもらうことにしました。
父は税務課の収納係というところで主に、地方税の徴収事務を担当していたらしく、地方税のことについて教えてもらいました。
地方税には、固定資産税や市県民税、国民健康保険税、軽自動車税といった税金があり、その金額は前年にどれだけ所得があったか、どれだけの価値の不動産を所有しているか等によって決まります。例えば、固定資産税は第一期から第四期までの四回に分けて納めることになっていて、それぞれに納期という税金を納めなくてはいけない期限があると話してくれました。
そこで、私は、それじゃあ、その期限までに税金を払わなかったらどうなるのかということを質問してみました。
納期を過ぎても支払わなければ、督促状や、催告書という手紙を送って納付を促し、それでも支払われない場合は、最終的には財産の差押えをしなければならないということに法律で規定されているそうです。
私は、なぜそこまでして、税金を集めなければいけないのか、払えない人も世の中にはたくさんいるのではないかと思い、とても理解に苦しんだし、人の財産を差押えたりすると、ひどい文句を言われたりするのではないかと思いました。
しかし、父は、確かに預金や給与などの差押えをした後に、電話がかかってきて怒る人や、市役所にやってきて脅迫まがいの文句を言う人がたくさんいたが、本当に恐いのは差押えをして滞納者に怒られることではなく、税金を払えるのに払わない人たちをほったらかしにして、真面目に税金を払っているたくさんの人たちが、不公平感を持ち、税金を払うことがあほらしくなってしまうということが一番恐いことで、税負担の公平・公正を確保するために、市役所の税務課や税務署の人たちは一生懸命に働いているのだと教えてくれました。
税金は、所得などに応じて公正に課税されて、みんなが公平に負担することで、まちに新しく道路をつくったり、学校や図書館、消防署などといった公共施設を建てたり、その他の、私たちが安心して生活するために必要な色々なサービスを享受することができるというのが、社会の仕組みであり、この仕組みが守られなければ、とても住みづらい社会になってしまいます。
私も近い将来、大人になって仕事をするときが来ます。
そのときは、父から教わった「税負担の公平・公正」という言葉のとおりに、社会の一員として税金の納期内納付がしっかりとできるような大人になっていたいと思いました。
※出典:国税庁ホームページ(http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/gakushu/sakubun/chugaku/h23/sakubun.htm#a01)
平成24年度・内閣総理大臣賞 ”税と社会と私”
- 応募点数:7328校・584661編
- 都道府県:大分県
- 学校:竹田市立直入中学校 3年
- 氏名:河村凜さん
今の私は、税のことについて、どのような仕組みで、どのように扱われているのかさえ、正直ほとんど知りません。ただ、日頃私達が様々な形で納めている税が、日本の為に、そして、私達の暮らしを支える為に使われていることは知っています。
私は、中学校生活最後の今夏、市が国際交流事業の一環として例年この時期に開催している「竹田市国際交流団」の一人として、八月八日から五日間、韓国にホームスティをしました。韓国では、平和学習をしたり、世界遺産を見たりする等、大変貴重な体験となりました。が、実は、この旅費の一部が、市の税金から負担されていることを知りました。自分でも分かっていましたが、出発前に両親から「税金で行かせてもらうのだから、よく感謝すること。他の人が一生懸命に働いて払われたお金なのだから、とにかくしっかり、たくさんのことを学んで来なさい。」と、言われました。私は、そう言われる度につくづく自分は幸せだと感じました。
こんなこともあり、私は父に「税とは何か。」を尋ねてみました。父が言うには「税とは簡単にいうと、社会に加わる時の会員費のようなものだよ。」ということでした。私はなる程と納得がいきました。例えば、自分が何かのファンクラブに入会すれば会員費が必要ですし、入会し続けるには、当然、年会費を払い続けねばなりません。税もこれと同じで、自分が社会の一員であり続ける以上、やはりきちんと納めるべきものですし、それでこそ、様々な恩恵にあずかれるのだと思います。
今年の七月、私達の故郷を大豪雨が襲い、洪水により大打撃を受けました。私の家は、災害があった所から大分離れていたので、最初はテレビの前でその被害状況を知りました。そして、両親がボランティアに行くというので、私もせめて何かお手伝いできることはないかと、作業に一緒に連れて行ってもらいました。実際に見た被災地は、にわかには信じ難い光景が広がっていました。陸上の大会で練習した歩道には泥が山積し、道路は砂ぼこりが立ち、マスク無しでは息もできないほどでした。作業には県内は勿論、前の震災で被害に遭われた東北地方からも支援に来られていました。「自分達の時も助けてもらったから。」というのがその理由でした。私はこうしたボランティアも税も、同じなのではないかと、その時に感じました。つまり、皆その時に持っている力に応じて分担し合い、相互に助け支え合っているからです。
大切な故郷の完全復旧には、まだまだ時間もお金もかかるそうです。きっとそこには、全国の方々の善意が詰まった税が充てられるでしょう。近い将来、私もしっかり納税できる人になりたい。それは、私が社会の一会員であると同時に、税の恩恵で大切な街が復興し、税のお蔭で、またとない学びの機会を得たからです。今度は支える番に。
※出典:国税庁ホームページ(http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/gakushu/sakubun/chugaku/h24/sakubun.htm#a01)
平成25年度・内閣総理大臣賞 ”税に支えられた日々に感謝を”
- 応募点数:7248校・583142編
- 都道府県:岩手県
- 学校:久慈市立長内中学校 3年
- 氏名:小倉環さん
平穏な日常に暗雲が立ち込めたのは、私が小学校四年生の春である。父の背骨に密かに巣食っていた悪性の腫瘍は、突然父から下半身の自由を奪ってしまった。とても稀な症例で、診断された時にはすでに手遅れだったらしい。入院した岩手医大での数度にわたった辛い抗癌剤治療に区切りをつけ、父は残された時間を家族と共に過ごすことを強く望んだ。
こうして、五年生の冬から父の在宅介護が始まった。仕事をしていた母に代わって日中父のお世話をお願いしたのは、介護のヘルパーさんや訪問看護師さん、そしてデイサービス施設の方々だった。勿論、病院の主治医や看護師さん達も折れそうな父と母の心を何度も支えて下さったという。
二年に及んだ父との最後の日々は、家族にとって何にも代えがたい大切な思い出になった。病気に向き合った父の生き様を誇りに思うと共に、父の闘病生活に関わって下さったさまざまな職業の方々の存在を知った。
そんな私に、別の視点を与えてくれたのが租税教室だった。税金とは社会全体を支える財源という漠然とした知識しかなかったが、一歩踏み込んで、具体的に認識を新たにすることができた。
父の療養を支えてくれたのは病院や福祉関係の方々だが、その基盤となっていたのは、大人が納めている税金なのだということを。父の場合は高額療養費や介護事業だけでなく、車椅子生活になった父を自宅に受け入れる際のリフォームにも補助してもらったと、今回初めて母から聞いた。地方公務員だった父と、教員を退職せざるを得なかった母もまた、税金を基にした制度に助けられたことも。
我が家が体験したことは特殊なケースかもしれない。しかし、今一度、広く日常の生活を見つめ直してみると、当然のように受けている社会の仕組みが、税金あってのサービスなのだと改めて理解することができる。国税庁のホームページによると、税金は私達が健康で文化的な生活を送るために、その費用を分担し合う会費のようなものなのだという。
ところが、一部の無責任な人達が税金など納めるべきお金を未納・滞納しているというニュースを耳にすることがある。本当に生活が困窮している場合ならまだしも、身勝手な理由で社会人としての義務を果たそうとしない人達が増えているのは情けないことだ。ただ個人の権利を主張するのではなく、自分の果たすべき義務をきちんとわきまえる大人になりたいと強く思う。
今、父と過ごした日々、わけても後半の四年間に想いを馳せる時、父を亡くしたことは不運ではあったけれど不幸ではなかったのだと感じている。税金のお陰でたくさんの恩恵を享受し、さまざまな立場の方々から支えていただいた父と私達家族。この感謝の気持ちを忘れずに、いつの日か社会に貢献できる大人になれるよう努力していきたい。
※出典:国税庁ホームページ(http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/gakushu/sakubun/chugaku/h25/sakubun.htm#a01)
平成26年度・内閣総理大臣賞 ”税金がたどり着く場所”
応募点数:7422校・615230編
都道府県:兵庫県
学校:三木市立三木東中学校 3年
氏名:川上結乃さん
Where Does My Money Go?
中学生の私たちなら読める英文です。「私のお金はどこに行ったの?」お金を盗まれたのでしょうか。それともなくしてしまったのでしょうか。いいえ、どちらも違います。ここでのMoneyとは税金のことです。“税金はどこへ行った?”こんな名称のプロジェクトがあるのを皆さんは知っていたでしょうか。
イギリス発祥のこの取り組みは、現在日本国内で約百三十もの自治体のサイトがあります。利用者はまず、扶養家族の有無(結婚相手や子どもがいるか・独身か)と年収(1年間の給料など)を入力します。すると、自分が自治体に払っている税金の合計金額や、その税金の使い道が、目的別に一日あたりの金額として表示されます。
内容の一例として、神奈川県横浜市では、市民が払っている税金の多くが“健康福祉”に使われていたり、東日本大震災があった宮城県南三陸町では、災害復旧費や復興費などの項目が設けられていたりと、自治体それぞれの特徴がみられます。利用者は、このようなサイトによって、自分の税金の使い道をおおまかに知ることができ、自治体の行政を身近に感じることができるというものです。
さて、消費税率が上がった今年四月から、まわりの話題は圧倒的に税金の話題が多くなりました。大人たちのため息をどれだけ聞いたことでしょう。「これ以上消費税が上がったら大変!」「車の税金が高くなった」「市によって税金が違うのはどうしてか」などと不満は尽きることのない様子で、税金はすっかり悪者扱いでした。しかし、今回私がプロジェクトについて調べたのをきっかけに、家族が税金について興味を持ち始めたのです。一緒にインターネットのサイトを検索したり、新聞記事を探したりしてくれました。そのうちに、税金が様々な方面で有意義に使われていることを確認し、深く納得したようです。このような自治体の取り組みが全国に広まったらいいね、と家族みんなで話し合いました。
私たち中学生にとって、消費税以外はあまりなじみのないお金“税金”。難しそうだし今はよくわからなくてもいいや、という考えではいけないと思います。今後、税金について勉強する機会などほとんどない状態で社会人になると、知識不足から納税に不満を持ったまま社会生活を送ることになります。子育てや福祉サービスを支えてくれる税金がなかったら、超高齢化とよばれる時代に私たちは心ゆたかに生きていくことができません。税金とは何か。なぜ税金を払う義務があるのか。そして払った税金の使い道は。積極的にたくさんのことを学んで、将来、気持ちよく税金を納められる大人になりたいものです。
Where Does My Money Go?
税金はどこにも行きません。またここに、私たちの生活にかえってくるものですから。
※出典:国税庁ホームページ(http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/gakushu/sakubun/chugaku/h26/sakubun.htm#a01)
平成27年度・内閣総理大臣賞 ”税金で持続可能な社会へ”
応募点数:7452校・616062編
都道府県:北海道
学校:札幌市立厚別南中学校 2年
氏名:平井菜花さん
「震災復興を風化させてはいけない。」
先日、歌手のさだまさしさんのコンサートへ出掛けたときに聞いたメッセージだ。さださんは更に「被災した方々のために自分が出来ることは、歌でみんなを元気づけること。」と言っていた。八月には東北でチャリティーコンサートを開く予定だという。
先ほどのさださんの言葉で、一つの問いが私の心の中に浮かんだ。それは、「震災が起きてから、自分は何か行動できただろうか」ということだ。振り返ると、震災が起きた年は募金活動に協力したが、その後は何もできていなかったのではないか。そんな自問自答から、「支え続ける」ことの難しさや大切さに改めて気がついたのだった。「ずっと続けられる復興支援って何だろう。」と母に尋ねたところ、「お給料の中から復興特別税を納めているよ。」と教えてくれた。「復興特別税」初めて耳にする税金の名前だった。
復興特別税とは、被災地の復興のために使うことを目的とした税金で、法人税、所得税、住民税の三種類がある。復興特別税は、仮設住宅の建設、がれきなどの処理や学校の復旧に使われるそうだ。中でも復興特別所得税は、平成二十五年から平成四十九年までの二十五年間に渡って納める税金である。
東日本大震災から四年が経過した。もうかなり復興が進んでいるはずだ。そう思って調べてみた。すると、道路や施設、交通などのハード面の復旧は九割以上進んだ一方で、仮設住宅で暮らす人は未だ十万人以上、復興住宅はわずか二%しか完成していないという現状に、目を疑った。震災から四年経ってなお、不安を抱えたまま暮らしている人々が大勢いるというのだ。にもかかわらず、震災復興についてメディアで取り上げられる機会もめっきり減り、私自身も忘れかけていたことに気付き、愕然とした。そして、復興特別税の二十五年間という徴収期間は、一度壊れた町全体が元の姿に戻るまで支え続けることの意味を教えてくれているような気がした。
「何かしたい。」と強く思っても、人の思いはときに薄れたり、遠ざかったりしてしまう。だからこそ、「税金」という支援が必要だと強く感じた。「税金」は持続性のある確かな財源であり、復興のための揺るぎのない土台になっているからである。
税金の使い道は幅広く、今までもこれからも社会の基盤を支えていくものだ。今回、私が「復興特別税」のことを知り、税金の意義を実感したように、私達若い世代は、税の使い道について正しい理解をもつことが必要不可欠だと思う。一人一人がしっかりと教育を受け、様々な経験を経て、主体的に行動できる人間に成長すれば、やがて大人になったときに、納税を通して互いに支え合うという循環が持続するのではないだろうか。そんな未来予想図を胸に、これからは東北の復興に関心を寄せながら生活していこうと思う。
※出典:国税庁ホームページ(http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/gakushu/sakubun/chugaku/h27/sakubun.htm#a01)
平成28年度・内閣総理大臣賞 ”地球を救うために”
応募点数:7467校・629534編
都道府県:大阪府
学校:大阪教育大学附属天王寺中学校 3年
氏名:松尾一輝さん
今から三年前、日本を襲った台風十八号。特別警報が初めて発表され、マスコミにも大きく取り上げられた一方で、六人の方が亡くなられるなど多くの被害に見舞われた。当時私の曽祖母は、京都府綾部市にある古屋集落に暮らしていた。鳴り響く轟音と、流れ込む大量の土砂や倒木。押し寄せる台風は、過疎化の進んだ小さな集落を飲み込み、曽祖母の家を容赦なく襲った。後の復旧作業で家は元に戻ったものの、曽祖母は都会への避難を余儀なくされた。
ここ数年、大規模な台風や集中豪雨による被害が後を絶たない。地球温暖化やヒートアイランド現象が原因ともいわれている。そんな中、大阪府と京都府が「森林環境税」を四月から導入しているということを耳にした。府民税に加算されるこの税は、土石流発生時の倒木・流木対策にあてられるという。さらに、根本的な森林の荒廃を防ぎ、次世代に健全な森林を残すため、基盤づくりや人材育成にも使われる。それはまさに、古屋集落が経験したような大規模な土砂災害から、人々の暮らしを守る仕組みづくりといえるだろう。
税金というと、社会保障や公共サービスに使われているイメージが強く、森林や環境のための税という考えには、驚きすら感じた。しかし、世界全体でみると地球環境を支える税は決して珍しくないという。例えば、フィンランドやオランダをはじめとするヨーロッパ諸国では、二酸化炭素などの排出量に応じて、家庭や企業から徴収する「炭素税」が一般的になっている。また、アイルランドではレジ袋の使用量を削減するために、「レジ袋税」が導入されている。日本でも、「森林環境税」は多くの都道府県で取り入れられており、環境保護を意識した税の仕組みづくりが進みつつあると感じた。
世界各地で頻発する環境破壊と、危機感を増す地球温暖化。その影響や被害は極めて深刻であり、もはや見過ごすことはできない。こうした問題と向き合い、対策していくための手段の一つに税金があるのではないだろうか。一人の力で地球の未来を変えることはできない。だからこそ一人一人が、地球に生きる人間として「税金」という会費を納め、皆で地球を救う取り組みが求められているのではないだろうか。
地球環境を支える税は、今すぐその成果が実感できるものではない。しかし、私たちが大人になった時、あるいはさらにその先の世代まで、人々の安心な暮らしと豊かな自然環境を守る財源となるだろう。地球の未来を支える上で、税金が大切な役割を担っているのだと心に留めておくことが、今の私にできる小さな一歩なのかもしれない。やがて大人になった時、税金を通して私たちの未来に貢献したいと思う。地球に生きる一人の住民として、胸を張ってその役割を果たしたいと思う。
※出典:国税庁ホームページ(http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/gakushu/sakubun/chugaku/h27/sakubun.htm#a01)
まとめ
災害や家族の死など、それぞれ自分の体験をもとにした文章には、思いや力がこもっています。
先入観のない税に対する彼らのイメージは、私たち大人が忘れかけている大切なことを思い出させてくれるように思います。
中学生・高校生のお子さんをお持ちの方は、お子さんへ応募を勧められてはいかがでしょうか。
お子さんも、自分自身も、税金というものを見直す良い機会になるかもしれません。
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