子ども同乗車で喫煙したら罰金最大13万円!スコットランドの受動喫煙対策

昨年2016年12月、スコットランドで、禁煙対策の一環で画期的な法律が、満場一致で可決されました。

それが、『子どもの同乗する車でタバコを吸えば、最大で13万円の罰金を科す』というもの。

喫煙対策が非常に進んでいる国として知られるスコットランドですが、新たな取組みがスタートしました。

これに対し、喫煙対策後進国とも言える私たちの国、日本。

今回は、日本の喫煙対策の実態と比較し、スコットランドで可決された新たな喫煙対策の法律をご紹介します。



スコットランドで可決された受動喫煙対策の法律とは?

では、まずは今回スコットランド導入が決定された受動喫煙防止対策の法律について、もう少し詳しく見ていきましょう。

冒頭でもお伝えしたとおり、この法律では自動車内に子どもが乗っている際に喫煙することを禁止するもの。詳細は以下のようになっています。

項目 詳細
禁止される喫煙行為 自動車に子どもが同乗している際の喫煙行為
子どもの対象年齢 18歳未満
違反した際の罰金額 127ドルまたは119ユーロ(約1万3千円)
裁判になった際の罰金額 上記金額の約10倍

上記のように、罰金は基本1.3万円程度ですが、これが裁判沙汰になってしまった場合は約10倍(13万円程度)まで罰金額が跳ね上がり、喫煙をしたその現場で、即、罰金(約1.3万円)が徴収されるという厳しいものになっています。

政府主導で積極的に喫煙対策に臨む

Aileen Campbell MSP, Minister for Public Health and Sport

※出展:Holyrood Magazine

この法律に関して、担当となるスコットランド公衆衛生大臣であるエイリーン・キャンベル氏は次のように語っています。

「子どもが車に乗っているときにタバコを吸うことが安全ではないのは、誰にでもわかることです。

たとえ短い時間でも、(喫煙することで子どもの体に)危険な量の化学物質が蓄積する可能性があります。」

“It’s simply not safe to smoke when a child is in the car. Dangerous levels of chemicals can build up, even on short journeys”(原文)

スコットランドでは2034年までに次世代の喫煙者数を5%以下に減らすという、政府の具体的な計画があり、今回の法律もその計画の一環として導入されるもの。

しかも、冒頭でも述べたように、この法律は議会で満場一致で可決されているのです。

ちなみに、日本ではようやく動き出したばかりの公共の場での喫煙禁止施策ですが、スコットランドではすでに2006年3月に公共の場での喫煙が全面的に禁止されています。

この結果、非喫煙者の副流煙に対する被害は激減し、のどや肺の症状を訴える割合が、全体の79.2%から、2ヵ月後には46.8%に大幅に減ったとの大きな成果が報告されています。

なお、この法律に違反した場合も現行犯で罰金が科され、その額は個人は50ポンド(約7000円)で、企業・組織に対しては2500ポンド(約36万円)です。

スコットランドでは、政府が喫煙及び受動喫煙の被害が甚大であることを認識しており、そのための対策を国をあげて行っているのです。

日本での受動喫煙に対する罰則

スコットランドに対し、日本では喫煙・受動喫煙どちらの法整備・罰則などの対策が大きく遅れているのが現状です。

違法または迷惑な喫煙行為に対する罰則や罰金を定めた決まりは地方自治体による『路上喫煙禁止条例』のみ。政府はほとんど関与することなく、基本的には各自治体の裁量に任せる形になっているのが現状です。

日本で初めて路上喫煙に罰金を科した千代田区の条例『安全で快適な千代田区の生活環境の整備に関する条例』を例に取ると、以下のような内容になっています。

項目 詳細
禁止される喫煙行為 区内全域で公道上の路上喫煙
例外となる場所 公園・車内・私有地等は適用外
違反した際の罰金額 2000円

罰金額はスコットランドの3分の1以下、子どもや嫌煙者も多く集う公園などの公共の場所で適用外になる等、非常に緩い規制と言わざるを得ないのですが、それでも「国民の喫煙権利を侵害する横暴な条例だ」とのクレームの電話が区役所に殺到する等、反対の声が後を絶たなかったとのこと。

主導するべき政府の対応が不十分である以前に、日本国民は喫煙という行為に対するモラルが欠けていることが、より大きな問題なのかもしれません。

受動喫煙防止法案が見送りに

さらに、今年6月に東京オリンピック開催に向けて整備されるはずだった、飲食店での喫煙を原則禁止とする『受動喫煙防止法案』の国会の審議も見送りとなりました。

※飲食店は原則禁煙とする法案が出された当時の内容は『健康増進法改正で飲食店は”原則禁煙”に!今、受動喫煙の害を知ろう。』をご覧ください。

タバコメーカーの圧力に屈するという経済第一主義の名のもとに、一向に法整備が進んでいません。

スコットランドと日本の受動喫煙対策の比較

では、ここまでの内容を踏まえ、スコットランドと日本(千代田区)の受動喫煙対策を簡単に比較してみましょう。

スコットランド 日本
喫煙が禁止される場所 ①全ての公共の場
②18歳未満の子どもが同乗する車内
公道
例外となる場所 一部の喫煙所や、末期患者を預かるホスピス等 公園・車内・私有地・飲食店など多数あり
罰金額 ①個人:7000円、企業・団体:36万円
②1.3万円、最大で13万円
2000円

上記のように、日本の受動喫煙対策は非常に規制がゆるいと言わざるを得ません。

受動喫煙で起こる被害を認識していない、もしくは、認識しておきながらそれを取り締まらないという意識のなさが見て取れる悲しい結果となりました。

受動喫煙で起こる病気・不調の例

最後に、受動喫煙で起こる病気の例を簡単にご紹介します。

  • 肺ガンをはじめとする、全ての種類のガン
  • 化学物質過敏症
  • 気管支喘息、気管支炎
  • 心臓病全般(心筋梗塞、狭心症など)
  • あらゆる肺の疾患(肺炎、COPDなど)
  • 脳梗塞
  • ペルテス病
  • アトピー性皮膚炎
  • アルツハイマー
  • 発達障害
  • 知能低下
  • ADHD
  • 知能低下
  • 加齢黄斑変性
  • 難聴
  • 虫歯

以上のような病気・不調の被害が報告されていますが、これはほんの一例。上記以外にも数え切れないほどの病気・不調を引き起こす危険性がタバコには潜んでおり、多くの有害物質を高濃度で含んでいるのです。

子どもは病気・不調のリスクが高い

さらに恐ろしいのは、子どもへの影響は大人よりもはるかに大きいこと。

子どもの呼吸の回数は成人の2倍とされますので、これは副流煙とそれに含まれる有害物質を2倍多く吸い込む可能性があることを意味します。加えて、子どもは大人に比べ体も小さく、免疫系も整っていないことを考慮すれば、その影響は計り知れません。

まとめ:もっと厳格な受動喫煙対策を!

以上のように、スコットランドの受動喫煙対策と日本のそれとでは、天と地ほどの差があります。

政府のみならず一般の人々の間でも受動喫煙の恐ろしさが認識されているスコットランドに対し、歩きタバコや吸い殻のポイ捨てが横行するほどモラルの低いここ日本では、その足下にも及ばないでしょう。

タバコや副流煙は猛毒であり、最も身近な凶器です。

その認識を周囲の喫煙者に、少しでも多く、一人でも多く持ってらえたら、きっと上記のような病気・不調は減り、より健康な住みやすい社会を、子どもたちに残してあげられるのではないでしょうか。

そして、それが今を生きる私たち大人の責任ではないでしょうか。

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