『抗生物質』
恐らく誰もが一度は耳にし、誰もが一度は使用したことのある薬ではないでしょうか。
日本では、風邪やインフルエンザなどにかかった際や、アトピーなどの湿疹の治療用軟膏として処方されることも多く、今日、医師が最も多く使用する薬の1つとなっています。
細菌を殺す強力な作用があるため、それだけ有用な薬のように思われていますが、しかしその一方で、様々な、かつ恐ろしい副作用があることはあまり知られていません。
風邪やインフルエンザなどにかかった際に安易に飲むことは、全く意味がない上に甚大な副作用を引き起こす場合があり、非常に危険です。
薬は反対から読むと『リスク』と読めるように、安易に飲むのは非常に危険な行為。それは抗生物質においても同様です。
そこで、この記事では、
- 抗生物質とは何か?どんな種類・特徴があるのか?
- 抗生物質を使用することで起こる副作用・リスク
- 抗生物質の代わりに使うべき、食品やハーブなどの代用品
主に上記の内容について、今私たちが知るべき『抗生物質』についての知識をわかりやすく、詳しく解説します。
30秒でわかる記事の概要
抗生物質とは?
まずはじめに、抗生物質について詳しく書いていきたいと思います。
抗生物質とは、細菌を殺す、もしくは増殖を抑えるための薬です。
適切に使用すれば、特定の感染症に対しては非常に有効であり、最も有名なものとしては1928年にイギリスの細菌学者アレクサンダー・フレミングが発見した『ペニシリン』が挙げられます。
ペニシリン発見以前は、多くの人々が感染症により命を落としていましたが、ペニシリン発見後1940年代までには手術をより安全に行うことが可能になり、平均余命の向上に大きく貢献したとされます。
しかし、細菌以外が原因となって起こる感染症には効かず、また、抗生物質は種類によってそれぞれ決まった細菌にしか効果がないため、使用には非常に慎重を要する物質です。
抗生物質の種類
では、抗生物質にはどんな種類があるのでしょうか? 代表的な10種類をご紹介します。
分類 | 具体例 | 詳細・備考・作用する病気など |
---|---|---|
ペニシリン類 | ペニシリンVカリウム アモキシシリン アモキシシリン/クラブラン酸塩 |
最初に発見された抗生物質 肺炎、梅毒、咽頭炎など |
テトラサイクリン類 | ドキシサイクリン テトラサイクリン ミノサイクリン |
ニキビ、尿路感染症、腸管感染症、眼感染症、性感染症、歯周病など |
セファロスポリン類 | セフロキシム セフトリアキソン セフジニル |
耳感染症、尿路感染症、皮膚感染症、髄膜炎など |
キノロン類 | シプロフロキサシン レボフロキサシン モキシフロキサシン |
肺炎、細菌性前立腺炎、炭疽症、尿路感染症など |
リンコマイシン類 | クリンダマイシン リンコマイシン |
骨盤内炎症性疾患、腹腔内感染、下気道感染など |
マクロライド類 | アジスロマイシン クラリスロマイシン エリスロマイシン |
肺炎、百日咳、皮膚の感染症など |
スルホンアミド類 | スルファメトキサゾール スルファサラジン スルフィドオキサゾール |
尿路感染症、ニューモシスチス肺炎、中耳炎など |
グリコペプチド類 | ダルババンシン オリタバンシン テラバンシン バンコマイシン |
ブドウ球菌感染、複雑な皮膚感染症など |
アミノグリコシド類 | ゲンタマイシン トブラマイシン アミカシン |
静脈内で作用する |
カルバペネム類 | イミペネム/シラスタチン メロペネム ドリペネム エルタペネム |
胃感染、肺炎、腎臓感染、多剤耐性院内感染など |
※Drugs.comより引用
抗生物質が効く病気・効かない病気
続いては、抗生物質が効く病気と、そうでないものについて見ていきましょう。
抗生物質が効く病気の例
まず、抗生物質が効く病気としては以下の感染症が挙げられます。
- 耳や膿瘍性の感染症
- 皮膚感染症
- 髄膜炎
- レンサ球菌性咽頭炎
- 暴行・腎臓などの感染症
- 細菌性の肺炎
- 百日咳
抗生物質が効かない病気の例
逆に、抗生物質が効かない病気・症状としては以下のものが代表的です。
- 風邪
- インフルエンザ
- 咳
- 気管支炎
- 咽頭炎
- 胃炎
抗生物質が持てはやされる日本
上記の病気・症状で医者にかかった場合、日本では抗生物質を処方されることが少なくありません。
しかし、上記の病気・症状はほぼウイルスによって引き起こされるため、抗生物質の効果は全くないのです。※前述のように、抗生物質が効くのは特定の細菌のみであり、ウイルスに対して有効ではありません。
にも関わらず、患者側は「薬を処方してもらったから大丈夫だ」という安心感欲しさと抗生物質=ウイルスや菌などを何でも退治できる万能薬のような誤ったイメージを持っていることが多いようで、医者に処方を求めます。
一方で医師も、薬を出さなかったことで患者が他の感染症・合併症にかかるかもしれないというリスク回避のために、抗生物質を処方するケースもあるとか。(一部意見)
医師側に問題がある場合もありますが、仮に薬を処方されたとして、最終的にその薬を飲むのは患者です。
抗生物質は万能薬などでは決してなく、恐ろしい副作用をもたらすこともある存在であることを、患者が認識する必要があります。
抗生物質の起こす重大な副作用
では、抗生物質にはどんな恐ろしい副作用があるのでしょうか? 数ある副作用の中でも、特に重大なものをご紹介します。
1:腸内細菌(善玉菌)を殺す
最も大きな副作用は、腸内細菌(善玉菌)を殺してしまうことです。
抗生物質は、前述したような特定の悪性細菌のみを殺すよう作用するとされていますが、実際は悪性の細菌だけでなく、腸内に存在する菌を無差別に殺してしまいます。
腸内には悪性の細菌以外にも、乳酸菌に代表される善玉菌も棲んでいますが、これらも標的となるのです。
善玉菌は、人間の免疫力を司る極めて重要な存在。善玉菌の死滅は、いずれ悪性の細菌や悪玉菌の繁殖を招き、免疫力を低下させます。
その結果、あらゆるウイルスや細菌に感染しやすくなり、様々な病気のリスクを高めるだけでなく、体の成長・発達や精神的な健康をも損なう可能性が指摘されています。
2:あらゆる種類のガン
あらゆるガンの発症リスクを増大させます。
2008年、International Journal of Cancer(国際癌ジャーナル)に掲載されたフィンランドの研究で、抗生物質の長期使用とガンの発症リスクに関する因果関係が示されています。
この研究では、約310万人のフィンランド人を対象に調査を行いました。
その結果、性別によらず抗生物質の使用期間や使用量が増えるほどに、あらゆるガンの発症リスクが増大することがわかったのです。
中でも、以下のガンのリスクは特に高く、抗生物質の使用量が少ない人の1.5倍以上にもなることが判明しています。
- 皮膚ガン
- 十二指腸ガン
- 膵臓ガン
- 腎臓ガン
- 膀胱ガン
- 肝臓ガン
- 前立腺ガン
- 肥満・体重の増加
3:自己免疫疾患
体のあらゆる免疫系に悪影響を及ぼし、自己免疫疾患のリスクを増大させます。
自己免疫疾患とは、免疫機能が狂い、体内のあらゆる臓器を標的に攻撃し始める病気のこと。代表的なものには、クローン病やセリアック病があります。
2016年のアルバータ州立大学の研究者らによる発表では、腸内細菌のバランスが乱れることで、クローン病やセリアック病、過敏性腸症候群など複数の自己免疫疾患のリスクが増大することがわかっています。
4:スティーブンス・ジョンソン症候群
スティーブンス・ジョンソン症候群とは、皮膚や粘膜に重篤な疾患が起こる病気です。
初期段階は発熱や喉の痛み・腫れなど、風邪やインフルエンザと似た症状から始まり、やがて火傷のような発疹が起こり、皮膚の剥がれ・出血を伴い皮膚が壊死する等の重大な症状が起こります。
また、他にも、以下のような症状も報告されています。
- じんましん
- 皮膚の痛み
- 発熱
- 咳
- 顔や舌の腫れ
- 口内・喉の痛み
2002年にカナダで行われた研究では、抗生物質の中でも特にペニシリン、スルホンアミドとスティーブンス・ジョンソン症候群の発症との有意な因果関係が示されており、合併症のリスクがあることまで指摘されています。
5:アレルギー症状
喘息、湿疹、鼻結膜炎など、複数のアレルギー症状の発生リスクを増大させます。
2009年に米国アレルギー学会が発表した研究によれば、特に幼児期に抗生物質を使用すると、複数のアレルギー症状の発生リスクが高まるとのこと。
この研究は世界29ヵ国・13万人を超える参加者を対象に調査を行った大規模なもの。
その結果、生後1年以内に抗生物質を使用した場合、子どもが6〜7歳時に、上記のアレルギー症状を発症しやすくなるというデータが出ています。
体の機能が整っていない子どもへの抗生物質の使用は非常にリスクが高いことが見て取れます。
6:血液異常
血液に悪影響を及ぼし、以下のような血液異常を引き起こす場合があります。
- 白血球の減少:ウイルスや細菌の感染リスクが増大します。
- 血小板の減少:出血しやすくなったり、血液の凝固作用が弱くなり傷が塞がりづらくなったり、止血ができなくなる等の状態に繋がります。
特に、ベータラクタムやスルファメトキサゾールが上記の副作用を起こしやすいようです。
7:肝障害
肝臓に甚大な障害をもたらすことも指摘されています。
薬は主に肝臓で代謝・処理されます。これは、肝臓が薬を分解するための酵素をいくつも分泌するためです。
抗生物質もその例に漏れず肝臓で代謝・分解されますが、その際に肝細胞を損傷させることが判明しています。
2015年に発表された、インディアナ州立大学などによる共同研究では、抗生物質の一種『アジスロマイシン』の肝臓への影響を調査。その結果、アジスロマイシンの投与と肝障害の患者の因果関係が明確であったことが分かりました。
しかも、このアジスロマイシン肝障害は、投与後1〜3週間以内と短期間で起こり、重度の皮膚反応や重篤な合併症が起こり、最悪の場合は死亡または肝臓移植に至ることがあるとのこと。
肝臓は人間の体における最大の解毒器官であるため、それに障害が起きた際の影響は計り知れません。
8:肥満・体重の増加
肥満や体重増加のリスクを高めることもわかっています。
2015年にフィンランドで行われた生後1年以内の子どもを対象に実施した研究では、抗生物質を与えられた子どもは、そうでない子どもに比べBMI値が高かったとのこと。
また別の2014年にフランスのマルセイユ大学が行った研究では、抗生物質の『ドキシサイクリン』、『ヒドロキシクロロキン』を使用した患者の23%に、異常な体重増加が確認できたとの報告もあります。
一般的には、肥満や体重増加は食事や運動などの生活習慣との関係が深いのですが、こうした薬害による影響もあることを覚えておきましょう。
9:抗生物質耐性
そして最後の大きな副作用としては、『抗生物質耐性』を引き起こすことが挙げられます。
『抗生物質耐性』とは、抗生物質の過剰使用により、細菌が”耐性”を備えてしまい、その抗生物質が効かなくなること。
細菌は、時間の経過と抗生物質の使用量増加に伴い、それに適応し『スーパーバクテリア』や『スーパーバグ』と呼ばれる恐ろしい存在になります。この状態になると、もはや殺菌するための手段はなく、感染拡大に拍車がかかります。
つまり、本当に抗生物質が必要な場合に、その効果を得られないので、治療・回復の選択肢を減らしてしまい、本来不要な薬物治療による副作用や多額の費用がかかってしまう等の巨大なリスクにさらされてしまうのです。
実際に、CDC(疾病管理予防センター)は、アメリカ南東部では抗生物質の過剰摂取が社会問題になっていると報告しており、ECDC(欧州疾病予防管理センター)は、抗生物質耐性による細菌感染が原因で毎年約25000人が死亡すると伝えています。
『抗生物質耐性』は、過度の抗生物質の使用による最大の脅威と言えます。
その他の副作用
上記で挙げた9つの副作用以外にも、抗生物質の使用によって以下のような副作用が起こることが確認されています。
- 下痢
- 腹痛・けいれん
- 発熱
- 吐き気
- 血便
- 心臓の痛み
- 呼吸障害
- 腱炎
- 糖尿病
- 膣カンジダ
- 口内胃炎
- 歯の変色
- 潰瘍
- 水疱
- 息切れ
- 目眩
- 腎臓障害
症状の重さ・種類に個人差はありますが、複数の症状を同時に引き起こすことも珍しくなく、中には、ここに挙げていない特有の副作用を起こす場合もあるとされます。
抗生物質の代用品になり得るもの
このように、抗生物質は数え切れないほどの副作用を持ち、中には命に関わる極めて重大なものもあることから、安易な使用は絶対に避けるべきです。
では、抗生物質を使わないとすれば、他に何か手段はあるのでしょうか? ここからは、抗生物質の代用品となり得る食品を厳選してご紹介します。
1:ニンニク
まず筆頭として名前があがるのが、ニンニクです。
ニンニクはガンを予防する効果のある『デザイナーズフード』のピラミッドの頂点に立つ食品として知られるほど、強い抗酸化作用・抗ガン効果を持っていますが、抗菌効果も抜群。
古来より、ニンニクは中国などでは抗菌剤として利用されてきた歴史を持ち、その高い抗菌作用は数々の研究で明らかになっています。
2011年、アメリカ微生物学会によるニンニクの研究では、細菌に対する有効性が示されています。
この研究ではニンニクの抽出物を用いて抗菌効果を測定したのですが、その効果はニンニク濃縮物の濃度が高まるほど増加したとの結果が出ています。
これは、ニンニク中に含まれる有機硫黄化合物『ジアリルスルフィド』の作用によるものだとか。
また別の研究では、ニンニクに含まれる香り成分『アリシン』の可能性も指摘されています。
この研究は2005年オーストラリアの婦人科病院で行われ、ニンニク中の『アリシン』が高い抗真菌特性を持ち、非常に有用かつ安全な真菌予防剤となり得ると発表しています。
ニンニクの持つ効果は、抗酸化、抗ガン、抗菌と、抗生物質の代用品として完璧なもの。料理に使うのはもちろん、匂いの気になる方はサプリメント等で代用してもいいでしょう。
>> 農薬不使用。臭いもなし!オーガニックにんにくを使用した熟成黒にんにく
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2:ハチミツ
ニンニクと並び有名なのが、ハチミツです。
非常に高い抗菌性を持ち、黄色ブドウ球菌 、 緑膿菌 、 大腸菌などいくつもの病原菌に対する効果が示されています。
ハチミツの抗菌作用の要因は、下記のようにいくつもあります。
- 豊富な過酸化水素
- 最適なpHバランス(3.3~4.9)
- 糖の含有量の高さ(=高浸透圧食品)
- 多量に含まれるフラボノイドやポリフェノール等のファイトケミカル
こうした複数の要素が相乗効果をもたらし、他に例を見ない抗菌作用をもたらすようです。
2011年、Asian Pac J Trop Biomedに掲載された、ハチミツの抗菌性について各国で行われた50以上の研究を分析した発表にもこれは示されており、潰瘍、感染した創傷、火傷をはじめ、数多くの悪性細菌の殺菌、腸粘膜の修復を促進する効果など、様々な健康効果があるとのこと。
また、同研究では、通常の抗生物質が細菌が拡大するにつれて効き目が薄れていくのに対し、ハチミツは恒常的に抗菌作用を示すとも掲載されており、中でも、『マヌカハニー』と呼ばれるハチミツは特別だとか。
マヌカハニーは加熱する等、通常のハチミツの効き目が弱まる環境下に置いても、その効果が発揮される非常に優秀な食品とのことです。
ハチミツの抗菌効果を最大限得るためには、オーガニックであることはもちろん、熱処理を施していない生のハチミツであることが重要。加えて、それがマヌカハニーであれば理想的と言えます。
>> 世界最高の品質、本場ニュージーランド産。オーガニック・生マヌカハニー
3:エキナセア(エキネシア)
『エキナセア(エキネシア)』と呼ばれるハーブも有効です。エキナセアは免疫力の強化作用に極めて優れた効果を発揮します。
日本ではまだなじみのない名前ですが、アメリカやドイツでは、感染症や風邪などの自然治療薬として処方されており、とてもポピュラーなハーブ。
実は、抗生物質が登場するまでは、このエキナセアこそが菌やウイルス等による感染症の治療などに珍重されてきた薬だったのです。
使用目的として一般的なのは風邪の治療やインフルエンザ等の予防ですが、これ以外にも、あらゆる感染症の治療薬としても注目を集めています。
特に膣感染症への効果に優れ、アメリカ国立衛生研究所の研究では、エキナセアとクリームを併用することで、膣感染症の再発を16%まで低下させることが可能だとのこと。
これは、エキナセアにしか含まれない『エキナコシド』などの特有成分や、その他数々の抗酸化成分によるもの。
代々、ネイティブ・アメリカンは梅毒、マラリア、ジフテリアなどの感染症に使用してきており、現在では抗ガン効果や呼吸器系の感染症、肌トラブルの改善など、様々な健康効果があることに注目が集まっています。
最もおすすめなのはサプリメントで摂取する方法ですが、香りのクセがないことから、ハーブティーでも摂ることができます。
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抗生物質について:まとめ
医者側は「念のため出しておくか」患者側は「念のため飲んでおくか」と、私たちは抗生物質をあまりにカジュアルに飲みすぎてはいないでしょうか。
抗生物質は、腸内細菌を殺し免疫機能を低下。かえって健康状態を崩すだけではなく、クローン病やセリアック病などの自己免疫疾患、スティーブンス・ジョンソン症候群などの恐ろしい病気を引き起こす元凶です。
安易な服用・使用は避け、ニンニク、ハチミツ、エキナセアなどを使用し免疫力を高める『自然治癒』を優先するべきではないでしょうか。
また、自然治癒を高める食品を知ることと同時に、食事や睡眠・運動などの生活習慣を見直し、整えることも重要です。
抗生物質の代わりとなる食品の知識と、病気・不調になりづらい健康的な体作りを、普段から心がけましょう。
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